病名がわかる

 赤茶色のレンガ造りの大学病院の一室で、私は息子を抱きながら患者用の丸椅子に腰掛け、目の前に座る主治医の口元をじっとみつめていた。その口から言われた言葉は

「お子さん達は先天性ミオパチー・セントラルコア病という病気です。」

その聞いたことの無い病名に「えっ?もう一度言って下さい」と頼んだ。
 医師は以下のような説明を付け加えた。
「筋生検の結果、細胞の中央、つまりセントラルに穴があいている状態が見られる。その為、筋力低下を引き起こしている。又、症状の重軽は穴の多少とは関係ない。治療法はない。人間は一人ひとり、目や鼻の形が違うように、もって生まれたものなので、進行性のものではない(※)。リハビリによって、筋力を維持、高めるようするしか、方法が無い。ちなみに、日本でこの病気と判定されたのは、お子さん達が7、8例目だ。ただし、欧州では非常にめずらしいという訳ではなく、日本でも筋生検までする人は少ない為、運動が苦手、出来ないという程度で見過ごしてしまっている人が多いと思う。潜在的な患者はかなりいると思う。」
そして、世田谷の国立小児病院に一人同じ患者がいるとも付け加えた。私は初めて耳にした病名を紙に書いてもらい、病室を後にしたのだった。
 娘が生まれて5年間、求めていた答えが出たものの、それは私にとって二人の将来はどうなるのだろうか、代われるものなら代わってやりたいと、ただただ大きな不安に包まれるものだった。

 あれから23年が経過し、遺伝子学的な研究も進み、高熱症や側わん症との関係も明らかになってきた。14〜15年ほど前までは医師の間でもマイナーな病気だったのが、今では東京都の難病指定にもなっている。にもかかわらず、未だ多くの人が病名もわからず、複数の病院をまわるなど、悩み多き日々を送っていたという事を聞き、信じられなかった。そのような方々の為にも私のブログや、「みおぱちっく」がお役に立つことを祈っている。

※今は進行性であると訂正されている。

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