検査入院 その1

 『入院』、ずんと重い響きを持つ言葉だ。家族が一人入院すると、全ての歯車がガタビシとゆがんでくる。長男が生まれ、一ヶ月健診のとき、上の娘と同じように首のつきが悪かった。丁度その頃、この病院に東京女子医大からの出張専門外来があり、受診する事となった。

 当日、東京女子医大からの医師に診てもらい、娘の状態も合わせて話を伺ったところ、長い将来を見据え、本人のためにも病名をしっかりと見極める為、検査入院するようにと勧められた。
 当初一週間から十日間位の入院期間と聞かされたが、結局は二週間くらいの入院となった。
 五歳の幼児と四ヶ月の乳飲み子の二人まとめての入院である。準備も大変だった。哺乳ビンからおむつまで持参した。一月の中旬に入院生活がスタートした。寒い時だった。事情の解らない娘は、いつも楽しそうに病院内を走り(?)回っていた。外見からは全く普通の健康な幼児としか見えない為、訝しげな視線を送られる事も度々有った。
 屋上で寒風に晒されながら一人で洗濯物を干していると、大きな不安に飲み込まれ、自然と涙が滲んでしまった。そんな時二人の無邪気な笑顔に接し、これから大変なのは自分ではなく、子供達自身なのだと戒める他なかった。どうやって現実を受け止めたらよいのか。病名がはっきりし、子供達が理解出来る年齢になった時、どのように説明したらよいのか、その時の二人のショックを思うと、口では言えない不安にまとわりつかれたものである。

 余談ではあるが、入院生活中に、私自身が一番困った事は風呂の問題である。子供二人は患者の為、定期的に入浴できたが、私は施設を使えない。入院仲間のお母さんから近くの銭湯を教えてもらって通った。
 ただ一度だけ、子供二人と一緒に入浴してもよいという許可があった。ただし、子供二人は洗髪してもよいが、私はダメと言われた。何故なのか、今でも不思議だ。(2005.10.13)

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