エスカレーターを止める女

 自分の乗っているエスカレーターが急に止まったことはありますか?私は3回もあるんです。

 一度目は地元の駅のエスカレーター(昇り)。
 二度目はそれとは別の駅のエスカレーター(昇り)。
 三度目は近所のスーパーのエスカレーター(下り)。

 エスカレーターが急に止まるとどうなるかというと、慣性の法則に従うので前のめりになります。
 一度目の時はこらえきれずに前に倒れこみ、向うずねを一段上の角に打ち付け、あざを作りました。
 三度目の時は下りでしたが、運良くベルトにしっかり掴まっていたことと、スーパーなので速度がゆっくりだったこともあって、一段下に片足が降りたところで踏み止まり、事なきを得ました。
 問題があったのは二度目の時です。

 一度目の時同様、前に倒れこんですねを打ちました。起き上がって痛い足をさすりながら見上げると、まだエスカレーターの段は半分近く残っています。残りの段を登りきらなければなりません。しかし、エスカレーターの段差は私にとって少し高めなので、登るのは大変です。
 えっちらおっちらよじ登っていると、後ろの方から「なんで止まったんだよ!」と、文句を言う声がしました。その声の主が私を追い越しながら、私を横目で見て、「足が悪いのか、じゃあしょうがないな」と言ったのです。
 はぁ?! エスカレーターは私のせいで止まったとでも言うのですか?私が転んだからエスカレーターが止まったのではなく、エスカレーターが止まったから私は転んだんですよ!それで、登るのに苦労しているんじゃないですか!だいたい、転んだ衝撃を感知して止まるエスカレーターなんて、かなりのハイテクです。

 私が階段を登っているとき、怪訝そうに何度も振り返りながら通り過ぎていく人はよくいますが、こんな誤解をされたのは初めてです。
 確かに三度もエスカレーターの急停止を経験していると、「おまえが止めた!」と言われても反論しにくいものがありますが、仮に私が怪しい電磁波を出していたとして、それはミオパチーとは何ら関係ありません。
 無実です、濡れ衣です、冤罪です。誰か弁護してください。
(2005.12.13)

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