ライフル射撃!!

 大学の入学式当日、部活やサークルの勧誘でごった返すキャンパス内を、他のどんな勧誘にも目もくれず、射撃部の出店(でみせ:各部、各サークルが設けた簡易案内所)を目指しました。やっと見つけた出店の前で躊躇する私に、一人の先輩が「射撃に興味がありますか?」と声を掛けてくれました。
 一通りの説明を聞き終えて、私は何かが違うことに気付きます。

 ご存知ない方もいらっしゃると思いますが、射撃にはクレー射撃とライフル射撃とがあり、協会は別々。飛んでくるピジョン(お皿)を撃ち落とすのがクレーなら、止まった的を狙うのがライフルで、スポーツとしては全くの別物なのです。
 大学にある射撃部のほとんどはライフル射撃部で、私の大学もそうでした。

 しかし、今さら後には引けませんでした。最後まで迷っていた自動車部にはもはや何の魅力も感じません。そもそも、車に乗る度に酔い、ガソリンスタンドや駐車場の側を通りかかるだけでも気持ちが悪くなる私に、自動車が向いているとはとても思えません。もう私には射撃しか残されていないのです。
 私はクレー射撃を諦めて、ライフル射撃で手を打とうと決めました。

 出店の先輩にミオパチーのことを話し、私にもできるかどうか、と言うよりも、私でも入部させてもらえるかどうかを尋ねました。
 私の心配はただ一点。子供の頃、プラスチック製のおもちゃのピストルの引き金でさえ片手で引くことができなかった私に、ライフルの引き金を引くことができるのかということでした。体育会ならではの厳しさや、人と同じようにできないことが原因のいじめには、耐えてみせると意気込んでいました。(スポ根漫画の影響ですね。)またしてもこれは的外れな心配だったことがすぐにわかるのですが、とりあえず射撃場に見学に来てはどうかというすすめもあって、翌々日、射撃場を訪れることになりました。

 学生の行うライフル射撃の種目には、大きく分けてARとSBの2つがあります。AR(エアライフル)はいわゆる空気銃で、空気の力で鉛の弾を撃ち出します。SB(スモールボア)は火薬銃なので、実弾を使用します。
 見学に行った日、私はまずこの2つを見る前に、子供でも扱えるビームライフルを触らせてもらうことにしました。これはビームしか出ないので、ゲームセンターにあるのと同じような感覚です。さっそく心配していた引き金を引かせてもらうことに。「何を心配する必要があるのか」と先輩が不思議がったように、引き金は触った程度であっさり落ちてしまいました。スポーツライフルの引き金は、それこそマウスのクリックほどの力も必要としないのです。
 ビームライフルを台に置いたままで何度か撃たせてもらった後、いよいよ構えて撃ってみることになりました。ところが!重くて銃が持ち上がりません。それもそのはず。銃の重さは5〜6kgもあったのです。

 こうして、私の前途多難なライフル生活が幕を開けたのでした。
 ただし、4年間いじめなどは全くなく、同期は勿論、先輩、後輩、OB・OGにも恵まれ、いつも助けられ、お世話になり、皆いい人達ばかりだったことを付け加えておきます。スポ根。(つづく
(2005.11.13)

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