モルモット体験

 5歳の誕生日を迎えてすぐの頃、病名を調べるため、大学病院に検査入院しました。血液検査、レントゲン、心電図、CTスキャン等の定番検査に加え、ミオパチー独特の検査がいくつかあり、入院は2週間に及びました。
 母はこれをミニ人間ドックと表現しますが、私の見解は少し違います。当時日本ではミオパチーだと分かっている患者は少なく、私は貴重なサンプルだったはず。医師や大学にとって私は、実験用とは言わないまでも、データ収集用のモルモットであったに違いありません。その証拠に、私と弟(共に入院、当時生後4ヶ月)にそれぞれ男女二人ずつの担当医がつき、それ以外にも何人かの医師が私たちに関わりました。

 さて、私はかなり元気なモルモットでした。
 それまで腎盂炎で何度も入院を経験していましたが、その時はずっと点滴につながれたままで、食事も味のないものばかりだったのに比べ、この時は体はいたって健康で、痛いところも苦しいこともなく、ベッドに寝ている必要さえないわけです。5歳の子供にとって病棟は格好の探検場所。同じぐらいの歳の女の子と仲良くなって、毎日遊びまわっていました。
 時には看護婦さんにくっついて歩き、私も病室を巡回しました。

 ある日父が腿から注射器で組織を採取され、私の病室のベッドでぐったりしていたときは、わざとその部分を叩いて怒られ、逃げました。大の大人が苦痛に顔をゆがめ、動けずに横たわっているのです。そうとう痛かったのでしょう。悪いことをしました。
 この検査により、ミオパチーの遺伝子はほぼ間違いなく父親から受け継がれたということが、後にわかったそうです。と同時に、本人もミオパチー患者であることを初めて知ることになりました。

 肝心の私の検査についてですが、痛みを伴わないものに関しては、遊園地のアトラクション感覚で、ドキドキワクワクの体験でした。

 とにかく、5歳のモルモットは特殊な環境を満喫し、あっという間の2週間を、楽しく終えたのです。。。2つの検査を除いては。(つづく
(2005.10.18)

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