急がば歩け!

 人は急いでいる時、走ろうとします。それは本能であり、走れない私でさえそうです。
 体が少し前に傾いて、脚の回転が速くなる。そうすると普通は体が弾んで歩幅が増し、スピードが出るのですが、私の場合は弾まないので、前傾姿勢になった分、バランスが崩れ、かえって失速してしまいます。
 だから本当に急いでいる時は、早歩きをするしかありません。横断中に信号が点滅を始めたときや、踏み切りが閉まり始めた時は、体は直立したままで歩幅と回転数をできる限り増やして対処します。

 ですが思い浮かべてください。急いでいる場面で堂々と歩く女。早歩きは時に堂々とした印象を人に与えます。しかも早歩きと言ってもそれほどスピードが出ているわけではないので、なおさらです。
 では想像してみてください。あなたがエレベーターのドアを開いて待っている人の立場だったら、バスの発車を遅らせて待っているドライバーの立場だったら。少しは急いでほしいと思うはずです。

 私としては最も早く目的地に到達する手段を選んでいるのですが、精神的な苦痛を与えていることはまちがいありません。しかも、説明する場は与えられないのです。
 それに比べたら、多少到達が遅れても、一生懸命走っても無理なんですという姿を見せたほうがいいに決まっています。
 が、やはり、走りたくても走れない姿というのは見られたくないものです。
 このことは、まだ本当の意味で私が自分の病気を受け入れていないということなのかもしれません。

 与える印象通り、堂々と生きていけるようになるには、まだまだ修行が必要です。
(2005.10.8)

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