優先席には座れない

 電車やバスに乗るときは、できるだけ座るようにと医者から言われています。それは急なブレーキなどによる揺れに耐える力が不足しているからで、吊革につかまっていられなかったり、足で踏ん張れなかったりして転ぶと危険だからです。

 とは言うものの、ミオパチーは優先席には座れません。座っていると健康そのものに見えるので(健康ですが)、とても体に障害を持っているようには見てもらえません。ミオパチーが優先席に座りたい理由は老人と同じですが、若いくせにと思われるに違いないので、堂々と座れるようになるには本物の老人になるのを待つしかないようです。(優先席に座れなくてもいつまでも若くいたいですが…。)

 同じような経験を大学でしたことがあります。私の通う大学は障害者には優しくない建物も多く、運動にはなるものの、苦労することも多々あります。
 もう何年か前になりますが、ある校舎で4階の教室へ行くのにエレベーターを利用していました。エレベーターには張り紙がしてあって、そこには「学生は階段を利用すること」と書かれていました。学生である私がエレベーターを使うことにはやはり抵抗がありましたが、その一方で、ミオパチーなんだから使う権利はあるはずだとも思いました。それでも同乗者がいると肩身が狭く、悪いことをしているような気分でした。
 ある日、乗り合わせた先生に「学生はエレベーター使っちゃダメだよ」と言われたことがあります。「脚が悪いので」と言うと「なら仕方ないね」と言ってくださいました。聞いてもらえれば答えることができるので、罪悪感軽減です。でも、その先生より先に降りた私がすたすたと歩いていくのを見て、どう思ったでしょう。かと言って足をひきずって歩くような真似もできませんし…。

 見た目がなんともないというのは、不幸中の幸いではありますが、厄介なものです。「私は障害者です」という名札を下げて歩くわけにもいかず、疑いの目を向ける人に弁解することもできず、やっぱり優先席には座らず我慢して立っているしかありません。だから余計に、優先席に堂々と座っている若者がいると腹が立ちます。その人がミオパチーだったら仕方ないですけど。
(2005.9.14)

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